＜Edwards Bass Trombone　/　エドワーズ バストロンボーン＞

中部フィルハーモニー交響楽団　バス トロンボーン奏者　 森川 元気 氏

エドワーズの楽器は各パーツについて自分の好みの物を指定して購入しますから、同じB454モデルでも組み合わせによって全く異なった楽器に仕上がります。今回試奏した楽器は、バルブ、スライド、チューニングスライドは標準的なセッティングでしたが、ベルには21ゲージ、ソルダードリムの1083CFベルがアッセンブルされていました。この楽器の音色は重すぎず、軽すぎずで、使いどころを選ばない非常にバランスが良いサウンドです。隣で演奏するテナーやテューバの方にもよく好まれると思います。特にバストロンボーンにとって一番大切な中低音域は、暖かくもクリアであり、包み込まれるようなサウンドを持っているので、吹いていてとても気持ち良いもので、魅力的です。
　この楽器は反応が素早く、コントロールし易い楽器だと思います。リップスラーやレガートの繋がりも良好で、段差無く綺麗に音が繋がります。バルブを押さず、B管の時のストレス無く気持ちよく息が入っていく様は、アキシャルフローバルブの恩恵を大いに実感できます。また、この楽器のF管の抜けの良さは特筆に値します。B管とシームレスに行き来できる、とても良好な個体のヴァルブに感じました。もちろん、動作や気密にも全く問題は感じません。Gesレバーが旧仕様の物であることも嬉しいですね。演奏中に楽器のことを考えずに、音楽のことに集中出来るということは、とてもありがたいことです。
　この楽器は私もよく知るプロオーケストラ奏者の方が、メイン楽器として現場で使用してこられたものと伺いました。それだけに使用感は見られるものの、とても丁寧に使用されてきたことが感じられる状態です。また、今回の試奏前に改めて輸入代理店の技術者による調整を受けているとのことで、メカニカルの状態は今すぐにでも仕事で使える良好な状態を保っています。
　全体としてとても素性が良い楽器で、この楽器に対して大きく好感を持ちました。精密な造りや音色の良さといった、エドワーズの特長がよく感じられると思います。しっかりと鳴ってくれて、ホールをそのサウンドで満たしてくれる事でしょう。特にオーケストラで使いたくなる楽器ですね。